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SNS分析の前に知っておきたい「SNSの利用率」を確認する

前回の記事では、SNSの利用率を知ることのできるオープンデータを探し出しました。今回はそのデータを読み解いて、SNSの利用率についてまとめていきます。

SNS分析をする前に、SNSユーザーの構成は世間全体(または、自社のターゲット層全体)と比べてどのくらい偏っているのかをしっかり把握したうえで、分析結果を活用しましょう。

SNSの利用率を確認する

前回の記事で、SNSの利用率については情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査の「アンケート調査」で調べられていることがわかりましたので、この調査結果をみていきます。

報告書をチェックしてみる

SNSの利用率は調査結果報告書(PDF:3.87MB) にまとまめられており、ありがたいことに、出典を明記すればグラフや図表なども自由に利用できる*1ようなので、まずは該当の図表をそのまま掲載します。

※出典:「平成29年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(総務省情報通信政策研究所)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000564530.pdf

各種サービス別に利用率が算出されているこの図表から、年代別や男女別に利用率を確認することができます。また、対象となっているサービスは、主要SNSのほか、チャットツール的に使われているLINEやソーシャルゲーム系のサービス、動画/画像共有サービスなどの利用率を確認できます。

この図表からでも様々なことが読み取れるかと思いますが、この調査では集計表も公表(アンケート調査集計表(Excel:1.08MB))されていて、報告書に記載されていないデータも確認できるので、ここからは集計表から算出した結果を紹介していきます。
また、今回はSNS分析の準備としてデータを調べているので、beInsightでデータ収集可能なSNSのFacebookTwitter*2に注目していきましょう。

集計表から算出した結果をチェックしてみる

年代別/男女別のSNS利用率

集計表をもとに、95%信頼区間で区間推定を行い、その範囲を示すエラーバー*3をグラフに追加してみました。以下は報告書と同じく年代別/男女別のグラフですが、グラフの見方の確認がてら、眺めてみてください。

※出典:「平成29年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(総務省情報通信政策研究所)のアンケート調査集計表を加工して作成
http://www.soumu.go.jp/main_content/000564534.xlsx

では、結果を読み解いてみましょう。
まず、全体(回答者全体)のSNS利用率(Facebook31.9%、Twitter31.1%)を比べると、わずかにFacebook>Twitterなのですが、エラーバーが示す区間推定の範囲をみると、だいぶ重なっていることがわかります。つまり、実態はFacebook<Twitterであってもなんら不思議ではない、ということです。
このような調子で読み解いていくと、以下のようなことがわかるかと思います。

  • FacebookとTwitterの利用率は同じくらいで、どちらも3割程度の利用率
  • 10代・20代のSNS利用率はFacebook<Twitter
  • 30代・40代・50代のSNS利用率はFacebook>Twitter
  • 10代・20代のTwitter利用率は他の年代よりも高く、6割~8割弱程度
  • 20代・30代のFacebook利用率は他の年代よりも高く、4割~5割半程度
  • 男女間で特筆すべき差はなし

年代別/男女別のグラフを通して結果の見方を確認したところで、続いては報告書に載っていない属性別の集計結果を紹介します。

就業形態別/学歴別のSNS利用率

以下は就業形態別と学歴別にみた、SNS利用率です。*4
ちなみに、この分析の軸になっている「学歴(学生除く)」には、就業形態別の分析の軸にて確認できる「学生・生徒」の167名は含まれていません。かみ砕いて解釈すると、「現役通学者以外の最終学歴別」で比較している結果、ということです。


※出典:「平成29年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(総務省情報通信政策研究所)のアンケート調査集計表を加工して作成
http://www.soumu.go.jp/main_content/000564534.xlsx

就業形態別で分析したグラフからは、以下のような結果が読み取れます。

  • フルタイムのSNS利用率はFacebook≧Twitter
  • 専業主婦(夫)のTwitter利用率は他の就業層よりも低く、1割弱~2割程度
  • 学生・生徒のSNS利用率はFacebook<Twitter
  • 学生・生徒のTwitter利用率は他の就業形態よりも高く、6割強~8割弱程度
  • 無職のFacebook利用率は他の就業形態よりも低く、1割未満~2割程度

続いて、学歴別で分析したグラフからは、以下のような結果が読み取れます。

  • 高卒以降(短大・専門学校または大学・大学院)のTwitter利用率は高卒に比べて高い
  • 高卒以降のFacebook利用率も同様で、高卒に比べて高い
    →つまり、進学した人はそうでない人に比べてSNS利用率が高い
    ※中卒者はn数が小さく、エラーバーの範囲が大きいので、度外視
  • 大卒・院卒の学歴(大学・大学院)を持つ人のSNS利用率はFacebook>Twitter

ざっとこのようなところでしょうか。
調査結果から判明したことを元に、「大学に進学すると地元を離れることが多いから、離れてしまう友人と繋がるためにSNSの利用に積極的になるのかも」や「サークル活動などで連絡手段に使うこともあってSNS利用率が高いのかな」などなど、色々と仮説を出して推測してみるのも面白そうですね。

今回はターゲット層のSNS利用率を把握することが本旨で、因果関係の推測については本旨からは外れますが、例えば「学生・生徒にはTwitter利用率が高い10代・20代が多いはずだから、疑似相関*5なんじゃないか」といったご指摘も当然あるかと思います。
今回の集計表ではフェイス項目(属性に関係する質問項目)に対しても、同じ分析軸でのクロス集計が行われているので、分析軸同士の関係性もある程度は把握可能です。
一応、就業形態別にみた年代の内訳の確認しておくと、学生・生徒167名のうち、10代が122名(73.1%)、20代が45名(26.9%)とTwitter利用率の高い年代が占めています。
確かにこれは疑似相関かもしれない、ということで、「学生・生徒だからTwitter利用率が高い」といった因果関係は存在しない可能性がある点にご留意ください。

では続いて、所得や居住している都市の大きさはSNS利用率と関係があるのかをみていきます。

所得別/都市規模別のSNS利用率

以下は所得別と都市規模別にみた、SNS利用率です。
ここでの所得別の分析軸は、世帯年収(税込み)として聴取された設問が元になっていますので、世帯年収としてお考えください。


※出典:「平成29年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(総務省情報通信政策研究所)のアンケート調査集計表を加工して作成
http://www.soumu.go.jp/main_content/000564534.xlsx

ざっと結果をみると、それぞれの分析軸で目に見えた差はないようですので、結論としては以下のことが言えるかと思います。

  • 所得の高低では、SNSの利用率に大きな差はない
  • 都市規模の大小ではSNSの利用率に大きな差はない

なんとなく、「都会のほうがSNS利用率が高い」とか「いやいや、田舎のほうが高い」と思っていた人は、このデータをみる限りは数字の根拠のない思い込みだったということで、一旦はその仮説を棄却しておきましょう。

公表されている結果の中で、気になった属性のSNS利用率についてはあらかたチェックできたので、最後にまとめとして、Facebook、Twitterそれぞれのユーザーの構成比(男女比、年代比)を算出してみます。

SNSユーザーの構成比

以下のグラフは、回答者全体とFacebook・Twitterそれぞれのユーザーの構成比を並べたものです。*6

※出典:「平成29年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(総務省情報通信政策研究所)のアンケート調査集計表を加工して作成
http://www.soumu.go.jp/main_content/000564534.xlsx

ここまで見てきたデータの見方を変えただけですが、以下のようなことがわかります。

  • Facebookユーザー20代・30代・40代の比重が大きい
  • Twitterユーザー10代・20代の比重が大きい
    • 特に20代の比重が大きい
  • Facebook・Twitterどちらも60代の比重は小さい
  • Facebook・Twitterどちらも男女比に特筆すべき差はない

まとめ

適切なオープンデータを探して、適切に(前提条件を踏まえて)利用すれば、調査にコストを掛けずとも、知りたかったこと(SNS利用率)の裏付けになるデータを集めることができます、というお話でした。

今回は「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」について、SNS利用率関連のみに注目して結果を抜粋しましたが、この調査はそのほかにも、スマートフォンなどのモバイル機器の利用率、各種メディアのテーマ別重要度や信頼度などの結果が調査結果概要(PDF:1.26MB)に簡潔にまとめられています。興味を持った方は一読してみてください。

おまけ:SNSユーザー動向を探るために役立つデータ

今回の記事で紹介したもの以外にも、SNSユーザー動向の参考になるデータはたくさん公開されています。おまけとして、それらの中からほんの一部をご紹介します。
いずれもSNS分析をする際に知っておきたい結果が含まれていますので、気になったものはぜひ、チェックしてみてください。

  • 「通信利用動向調査」(総務省)
    世帯構成員編には「過去1年間にインターネットで利用した機能・サービスと目的・用途」といった項目があり、今回読み解いた調査よりも大きなサンプルサイズで確認したソーシャルメディアの利用率が確認できます(ただし、個別サービスごとには聴取していません)。また、企業編では、企業のソーシャルメディアの活用動向についても調べられています。
  • 「生活定点」調査(博報堂生活総合研究所)
    1992年からの調査結果が公開されていて、長いスパンでのトレンド変化を知ることができます。ソーシャルメディア関連はカテゴリ「16.メディア」に掲載されています。調査地域が首都圏と阪神圏に限られている点はご留意ください。
  • 「若者まるわかり調査2015」(電通総研)
    Twitterにおける、「複数アカウント利用」について触れている、面白い切り口の調査です。若者(未婚15~29歳男女)を対象にした単発の調査で、実施時期も2015年とやや古く、調査の一部分を抜粋してあるプレスリリースである点にご留意ください。

*1 総務省HP「著作権について」より
http://www.soumu.go.jp/menu_kyotsuu/policy/tyosaku.html#tyosakuken

*2 当初、”ミニブログ”として広まったTwitterは、厳密にはSNSではないとされていますが、ここではSNSと呼称します。ちなみに、Twitterの創業者で現CEOのジャック・ドーシー氏は、Twitterのことをインタレスト・ネットワーキング・サービス(SNSのように人間関係で結びつくのではなく、興味・関心で結びつくサービス)と称しています。
参考:ツイッターCEO一問一答詳報(上)インタレスト・ネットワーク 関心事で人々をつなぐ(毎日新聞)

*3 今回は95%信頼区間として、の範囲を描画しています。この場合、Pは調査結果のSNS利用率(標本比率)、nは各属性のサンプルサイズを当てはめます。標本調査による誤差を考慮しても、95%の確率で母比率(母集団のSNS利用率)がこのエラーバーで描画している区間に入る、と解釈してください。

*4 以降のフェイス項目を分析軸としたクロス集計では、各属性のn数(回答者数)を足し上げても全体(全回答者)のn数と一致しないことがあります。フェイス項目に「無回答」の人が存在するため、または「学歴(学生除く)」のように集計軸を絞り込んでいるためです。詳細な条件が気になる方は、出典元の集計表でフェイス項目の回答結果を確認してみてください。

*5 疑似相関とは、本来因果関係のない事象なのに、別の事象の影響を受けて一見因果関係があるように推測されることを指します。この例では、「学生・生徒になると→Twitterの利用率が高くなる」というような推測が、実は年代別のTwitter利用率の差によってそのような関係に見えている(という可能性がある)ことを指しています。

*6 前回の記事で調査概要を確認しましたが、この調査の男女別・年代別の構成比は住民基本台帳の実勢比例を元に決められているため、回答者全体の構成比は実態を近似したものと考えて問題ありません。